34//目をそらさないで
外の空気を吸おうと館の屋上に行ってみたら、先客が一人。
足を投げ出しながら、大の字で寝転がって。
ぼんやりと、眩しい空を眩しいとも思わずに見上げている。
その人へと、一歩踏み出す。
「何、してるんですか」
「光合成」
……何も言うまいと、レイは静かに彼の隣へと腰を下ろした。
ちらと見た横には、さっきの言葉通り視線一つ動かすことの無い、向日葵のようなその人が。そのまま。
紫の瞳が、陽射しに白く透けている。
「楽しいですか」
「楽しくはない。けれど栄養摂取、栄養補給」
そのまんまだ。
「なんだかね、あたたかいものを吸収しているみたいで穏やかになる」
反らしたまま、逸らさない。
「レイだと、太陽の光を反射してしまう?」
己の金髪をふと見て、…どうでもいいことですとだけ返しておいた。
そうだねと返ってきた。
そうして、その人と同じように自分も身体を反らした。
そうだな。
真っ直ぐ見たままなのも悪くない。
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「おーい、レイ。お前最近、よく外で時間を潰してるんだって?珍しいな」
いつも何してるんだ?という同僚の問いに、一言だけ返しておいた。
「光合成」
逸らさずにいるのも、悪くない。
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「ルナー!ルナー!」
「どうしたの。慌てて」
「レイがおかしくなったー!!」
「は?」
「マジどうしよう!暑さのせい?暑さのせい!?」
「ウルサイ。連呼するな」
「どうする!?」
「どうもしなくていんじゃないの」
太陽に慌てるのは、一人きり。